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Chris Jordan+Jurgen Lehl|クリス・ジョーダン+ヨーガン・レール
Midway:環流からのメッセージ
誉田屋源兵衛 黒蔵
“ミッドウェイ”とは聖と俗の中間
写真家が無惨な雛鳥を撮り、デザイナーがプラスチックゴミで美しいランプを作る理由とは?
最も近い大陸からも約3200キロの距離にあり太平洋の真ん中に浮かぶミッドウェイ諸島には、年間20トンにもおよぶゴミが流れ着く。アホウドリの雛の死骸から山盛りになったペットボトルのキャップが露出するのは、親が食べ物と間違い与えてしまったからだ。クリス・ジョーダンが無惨な雛の骸を写真に撮って知らしめるのは、ゴミが海鳥を死に至らしめる現実だけでなく、現代文明のありさまを映すもう一つの肖像だと言えよう。本展示作《ミッドウェイ》は、ジョーダンによる最新作にあたり、同時制作のドキュメンタリー映画『ミッドウェイ』のパイロット・ヴァージョンも会期中に公開予定。
これまでも消費社会に関わる問題を制作テーマとしてきたジョーダンは、文明社会が排出する残骸物を撮影した「Intolerable Beauty : Portraits of American Mass Consumption(耐えられない美:アメリカ大量消費社会の肖像)」(2003–2005年)や、現代アメリカ社会にまつわる衝撃データを視覚化した「Running the Numbers : An American Self-Portrait(数字は語る:アメリカの自画像)」(2006年–)で世界的に評価された。
本展では40年あまりを日本で過ごしたヨーガン・レール(デザイナー 1944–2014)が、砂浜で拾い集めたプラスチックのゴミにメッセージを込めて制作したランプを併設する。
ヨーガン・レールは 1944年ポーランドに生まれる。パリやニューヨークでテキスタイルデザイナーとして活躍し、1971年に来日、1972年にブランド「ヨーガンレール」を設立した。2006年には、職人の手仕事を尊重し、天然素材を使用した服、ベッドリネン、器、家具などを扱うブランド「ババグーリ」を立ち上げる。
早くから地球や環境に目を向けていたヨーガン・レールは、90年代後半から、沖縄県石垣島に農園を作り、海辺の家で1年の3分の1を過ごすようになる。砂浜を歩いているときに、貝殻や珊瑚にもまして目についたという海から流れ着いた大量のゴミは、ほとんどがプラスチック製品の残がいであり、そのゴミを集めてランプは作られた。醜いゴミから 美しいと思えるもの、実用的なものを作ることを「作ることを仕事にしている私の小さな抵抗」としたヨーガン・レールの思いが込められたランプを、誉田屋源兵衛 黒蔵という普段非公開の蔵で見る貴重な機会となる。
クリス・ジョーダン「CF000478 コアホウドリのヒナの体に入っていたもの」、ミッドウェイ諸島、2009年 © Chris Jordan
誉田屋源兵衛 黒蔵
〒604-8165 京都市中京区室町通三条下ル西側誉田屋奥
地下鉄東西線または烏丸線「烏丸御池」駅 6番出口から徒歩4分
OPEN:10:00-18:00
CLOSED:水休(5/4 Open)
¥600 / 学生¥400
© 2014 Naoyuki Ogino